歩くことは健康の第一歩
久田 美智子(ひさだ みちこ) 大阪府歩け歩け協会 理事 |
歩くことは健康の第一歩
身体のあちこちに脂肪がつきはじめ「ちょっと太り気味かなあ」と思いはじめた、平成10年4月。社内の健康診断で、高血圧のレッテルを貼られてしまいました。医師の言うには「薬より運動をしなさい」と歩くことを勧められましたが、学生時代はバスケットポールにアーチェリーとスポーツが大好きだった私にとって
「歩くことが運動なの?」
「歩くことが身体に良いの?」
と医師の勧めが何となく無意味なものに感じ、何かできるスポーツは無いものかと探しましたが、適当なクラブも仲間も無く、仕方なく近所を一人で歩くことから始めました。雨が降っては歩くのが嫌。残業でわずかに帰宅が遅れただけで今日は歩くのをやめようと考える。一人では、なかなか続かないものでした。単独では持続できないと判断し、主人と友人を誘い毎晩7.5kmの河川敷コースを歩き始めましたが、すぐには効果があらわれない日々が続き、「暑い」だの「寒い」だのと理由をつけては休みたい気持ちに駆られながらも、友人との待ち合わせの場所に行かなければならず、心にムチを打って持続させることが出来ました。
団体でのウォーキングに参加
ウォーキングに多少自信がついてきたそんな折り、新聞で歩け歩け協会のウォーキングのイベントがあるということを知り参加しました。大阪府北部の箕面公園で実施されたのですが、この日は大雨でした。どしゃ降りの中のウォークにもかかわらず参加者は700余名の大にぎわい、ウォーキングを楽しむ人の多きに圧倒されてしまいました。参加手帳をもらい、それに歩行キロ数や参加回数を認定してもらいました。ウォーキング貯金の様なものです。大阪府内には日本ウォーキング協会に加盟する団体が5団体あり、各団体がそれぞれに月3回程度の定例会を実施していますので、団体の特色や歩行コースなど自身の好みで参加できます。次もそしてその次も参加するうちに、歩行距離や参加回数認定のスタンプも増えてきました。それに比例して仲間も増え、歩くことの楽しさも増してきたのです。
ウォーキングの効果
ウォーキングに自信がついてきたころから、体重も少し減り、血圧の数値も下がり始めてきました。春先にアレルギー性鼻炎で悩んでいたのも、運動で体質がかわったのでしょうか、ウォーキングを始めてからピタリと治りました。社内でも階層の移動にエレベーターを使う必要もなくなり、リズミカルに階段を昇れるようになりました。何よりの効果は肉体的なものよりは、精神衛生的効果の方が勝っているように思いました。ストレスもなくなり、ウォーク仲間との会話が待ち遠しくなるのです。企業の中では味わえない横のつながりが心地よい刺激となり、併せて四季折々の自然に触れることが何より楽しい時間になったのです。ウォーキングが私の人生の後半を変えつつあると言っても過言ではないほどです。体力がついてきた最近は、登山に目覚め、日本百名山を登ろうと、年間10山ほどを目標にスタート致しました。九州の開聞岳、阿蘇山、韓国岳、祖母山、久住山をはじめ四国の石鎚山、剣山の2峰、御嶽山、乗鞍岳をはじめとするアルプスの山々。北海道の大雪山旭岳、富士山などもう30山ほどは登ったでしょうか。雪の上高地も素敵でした。乗鞍岳の大雪渓も凄かったです。中でも残雪期の大雪山・旭岳から黒岳を縦走したのは忘れられない思い出となりました。故郷四万十川の源流から河口まで全流路196kmをバスとウォークで訪ねる旅に100名の仲間を案内して行ったこともあります。
仕事を持ち家庭を支える一主婦が、ウォーキングを知らなかったら、休日は家事をして、買い物をして、井戸端会議で一日を終えるのが関の山、寂しい人生であったように思います。歩くことによって日本人の心を知り、日本の地形を知り、日本の四季を感じるという扉を開けたことに感激し、ウォーキングに感謝しております。
ウォーキングを始めるには
自分の都合のつく時間であれば、朝でも夕方でもいいと思います。ジャージの様な伸縮性のある、体の動かしやすい服装で出かけましょう。歩幅は普段より少し大股で腕は小脇に抱えた感じで前後に元気よく振りましょう。顔は下に向かず背筋を伸ばして前方の景色を目に入れながらリラックスして歩きます。
さあ、これでウォークの第一歩が踏み出せます。目標は一時開かけて一万歩です。長時間のウォークとなれば歩行姿勢に注意して自然体で歩きます。少し出っ張ったお腹も3ケ月したらへこみます。いい汗をかきますのでタバコも以前のようにふかさなくなるでしょう。お酒もほどほどになるはずです。人間の身体で一番先に老けるのは足だと言われています。その足を鍛えるのはジョギングではありません。ウォーキングです。これは医学的にも証明されております。歩くことに自信がついたら全国の至る所にウォーキング協会が主催している行事がありますのでご参加をお勧め致します。たまには一人で歩くのもいいものですが持続させるためには仲間と一緒に歩くことが効果的です。
これからのウォーキング
まだまだブームが続くと思われるウォーキングですが、現在は黙々と歩き、点と点を結ぶだけの歩行移動。健康への第一歩は確立できているのかも知れません。しかし体力低下の途にあるお年寄りや身体に障害を持つ方々には門戸の狭い団体ウォークです。この方達にこそボランティアの手が必要だと考えております。写真撮影とウォーク、歴史探訪とウォークなど、いろいろな形態と組み合わせることにより、多くの方々に参加して頂ける方向に舵をきる時期にきているのかも知れません。人類は2足歩行をすることによって他の動物より脳が著しく進化したと言われています。ならば今一度歩くということを考えてみる必要があるのではないでしょうか。日常の生活を歩くことを基本に考えていけば自ら答が出てくるように思います。学校も週休2日制になり、お子様との対語の時間が増えてきます。今こそチャンスです。一歩家から出てみれば、外は百科事典のようなもの。自動車の型式を語らい、電車を見ながらそのカラーリングを楽しむ、遠くに見える山の話、地形を知り、空を知る、ゆっくりと歩きながら、自然と対話していけば、きっと何かが見つかります。日射しを浴び、風を感じて歩く、雨もまた楽しいものです。
100年ほど前の日本は歩くのが主流でした。その後鉄道の発達、自転車の普及、そしてここ30年ほど前から車社会への変貌と、人々の移動の手段が大きく様変わりしてきました。日常生活を車に頼っている方、今すぐウォーキングをすることを、お勧め致します。
▲ 声を出すことも健康の秘訣。
ウォーク中の昼休みにはコーラスを楽しんでいます。